Ist das für das Leben oder nicht?

ライフをかける、という言い方を習った。

樹上作業(ライトリギング)の講習会で、一番心に残ったことだ。

ギアチェックの際、
アルミのカラビナを見せて、これでいいですか?
と聞いたら、ライフをかけますか?
と聞かれた。
それしか持参していなかったこともあって、
はい、と、答えると、
はい、わかりました、と言われた。

そして、作業開始。
ツリークライミングのためのメインロープをかける前に、
ツリーセーバーというベルトを樹上に引き上げる。
その際に、このカラビナを使おうとしたら、とめられた。

ライフをかけるものを使うのはやめてください、
代わりにこれを使ってください、
と、スチールのカラビナを渡されたのだ。

混乱した。

下の写真でも分かるように、
いや、この写真じゃわかりにくいかもしれないが、
強度を示す数字は、
アルミカラビナは27kN、
スチールカラビナは50kN。
人の体重を支えるのにはどちらも十分な強度だが、
スチールのほうが断然強い。そして断然重い。

なのに、
このアルミカラビナは
人を吊り下げられる強度があるのに、
道具ひとつ吊るす作業に使っていけないと言う。
逆に、
あのスチールのカラビナは
複数の人数の重量を支えられ、
重い枝を吊るすのに十分な強度があるのに、
ツリーセーバーのような軽いものをぶら下げるために使えと言う。

大は小を兼ねるのではないのか???
軽いものを吊るすのにわざわざ重い道具を使うのか???

一連の作業を通じてだんだんわかってきたのは、
スペックとしての数字、
強度の問題ではないということだ。

ある道具を、
ライフをかけるものとして使う、
と決めるかどうか、なのだ。

振り返ってみれば、最初のギアチェックのときも、
その道具はいいです・だめです、という判断をされたのではなかった。
ただ、わかりました、とだけ言われたのだった。
そして、自分の体をロープに繋ぐために使うはずのカラビナを、
ツリーセーバーに繋ごうとしたときに、
それはやめてください、と言われたのだ。

ツリーセーバーに繋ぐということは、
ゴリゴリと樹上の枝をまたいであっちこっちにぶつかりながら、
目の届かないところでどんな無理な力がかかるかわからない。
最悪、何かのはずみで地面に墜落してくる可能性もある。

こうした頑丈な道具の問題は、
内部的に割れや歪みがあっても
外部からは判別し難いということだ。
バイクや自転車のヘルメットと同じ。

なので、一旦ものを吊るすための道具として決めた、
あるいはものを吊るす作業に使ったものは、
2度とライフをかけるものとして使ってはいけない。
スペック的にどんなに強度のある数字であってもだ。
吊るすために使った道具のことを、
「リギング落ちしたもの」というのだそうだ。
そう、「落ち」というニュアンス。

スペックの比較は重要ではないとはいわないが、
それより優先すべき判断基準がある。
それは使ってきた・使っていくプロセス。

スチールだからダメ、アルミだからいい(またはその逆)
というものでは、全くない。
例えば、
人をレスキューする立場にある人は、
怪我人をかついで昇り降りする、つまり、
2人以上の体重がかかることがあるわけだから、
スチールカラビナをライフをかけるものとして使う、
と決めるだろう。
そして、決めたらそれをその用途のためにだけ使うのだ。
資材を投げおろしたりするために使ってはいけない。

それに伴って、
ライフをかけるものとそうでないものを、
きちんと分けておくのもとても大事になる。
スチールはリギング用・アルミはクライミング用
と材料で分けるとか、
吊るす場所を体の左右で分けておくとか。

なにかひとこと。