ここから4行に分けて、それぞれ、*テキスト*、*構文*、*各単語*、*まとめ*、という構成で説明していく。
単語の説明中、「< verus -a -um, adj」のように付けているのは、辞書の見出し語の形。
それは、ラテン語は語形変化するので、そのままでは辞書が引けないからだ。
ではまず第1行から。
*テキスト*
Avē vērum Corpus nātum dē Marīā virgine
*構文*
この行の中心はcorpus。
まずaveと挨拶の言葉がかけられ、そして、vērumという形容詞がついたcorpusに、さらにnātum dē Marīā virgineという説明がされている。
*各単語*
avē
この歌はイエスキリストに向かって語りかけている。
その、語り出しの挨拶として、また、賛美の敬称としてのことば。
vērum
corpusを説明する形容詞verusの変化形。
< vērus -a -um, adj 真実の、事実の、真実を語る、真正の、本物の
たいそう仰々しい形容詞。さすがイエスの身体を形容するだけある。
corpus
corpusの単数主格。
< corpus -poris, n 身体、肉体
文脈からいって呼格と解釈してもいいと思う。
直訳すれば「身体」でしかないが、マリアから生まれたと説明されているので、イエスのことだとわかる。
nātum
corpusを修飾する形容詞nātusの変化形。
< nātus -a -um adj (pp) [nascor] …から生まれた、生じた <+abl; a[ex] re>
< nascor -scī nātus sum, intr dep 生まれる、誕生する
このnātumは、nascorという動詞の過去分詞を形容詞として使っているもので、後続する前置詞句dē Marīā virgineとセット。
dē
prep <+abl> …から(下へ、離れて) (起源・出所) …から出た
なお、ネット上では、dēの代わりにexとなっているものも散見される。辞書にもnātusにはexを使うとある。ただ、dēもexも奪格支配なのでその後の歌詞に影響はない。
Marīā
女性名マリアMarīaの奪格(dēが奪格支配なので)。
virgine
virgōの単数奪格(dēが奪格支配なので)。
< virgō -ginis, f 乙女、処女
Marīāと並列。
あるいは、名詞ではなく、形容詞として、Marīāを修飾していると解釈することもできる。
< virgō -ginis, adj 未婚の
*まとめ*
「ご挨拶をいたします、乙女マリアから生まれたまことのあなたよ。」
corpusは身体、肉体だが、「あなた」と意訳してみた。
(つづく)