Ave Verum Corpus – Teil III

Ave Verum Corpus 第3行

*テキスト*
cūjus latus perforātum undā flūxit et sanguine

*構文*
この行の文は
主格[cūjus latus] – 動詞[perforātum]
そして
奪格[undā et sanguine] – 動詞[flūxit]
という二つの文章からなる。

*各単語*

cūjus
関係代名詞quiの中性単数属格。

続くlatusとセット。
先行詞は相変わらず中性名詞corpusだろう。
ここで所有代名詞ではなく関係代名詞の属格を使うのは、ラテン語の特徴。

latus
latusの単数主格。
< latus lateris, n [lateo] 横腹、脇腹、肺

perforātum
前の中性名詞latusを主語とし、ここでは省略されているestとともに所相(受動態)三人称単数完了形を作る、perforōの完了分詞。
< perforō -āre -āvi -ārum, tr [per-/foro] 穴をあける、突き通す

undā
undaの単数奪格。
< unda -ae, f 動いている水、波

行末のsanguineも同じ奪格だが、その用法がわからない。
後続する動詞flūxit(< fluō)は自動詞なので、目的語ではないはずだし、また、目的語なら対格のはず。
すると
「汗とか血を流す場合には,流れるものを奪格におくのだそうです。」
と書かれたサイトがあったのでそれに則る。
ただ、「だそうです」なので、さらなる出典を知りたい。

flūxit
fluōの三人称単数完了形。
< fluō -ere fluxi fluxum, intr (液体が)流れる

et
undāとsanguineを並列で結ぶ接続詞。
英語のandにほぼ同じ。

「水と血」には出典がある。
「然るに一人の兵卒、鎗にてその脅をつきたれば、直ちに血と水と流れいづ。」ヨハネ傳福音書(文語訳)19:34
「sed unus militum lancea latus ejus aperuit, et continuo exivit sanguis et aqua.」Ioannes 19:34 Biblia Sacra Vulgata(ラテン語聖書)

なぜ聖書で「血と水」とあるのにこの歌では「水と血」と順番が入れ替わっているのか。それは歌えばすぐわかる。すなわち脚韻を踏むためだ。
第1行目 … dē Marīā virgine
第2行目 … prō homine
第3行目 … et sanguine
第4行目 … exāmine
と-ineで揃えており、特に後半の二つはそっくり。耳コピしようとした時に同じものだと勘違いしてしまったくらい。

さて、槍で刺されれば「血」が出るのはわかるがなぜ「水」も出てくるのか、神学が何らかの説明を与えているのだろうか。
水は聖なるもの、精神的なもの、そして、血は俗世のもの、肉体的なものの象徴、とか。

sanguine
sanguisの単数奪格。
< sanguis -guinis, m 血、血液

*まとめ*
「あなたの脇腹は突き刺され、水と血が流れ出ました。」

ここもいままで同様、「あなた」としているのはcorpusである。

(つづく)

なにかひとこと。